一冊の本に救われた医療施設告知の新聞広告

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こんにちは、
うめぴぃゴーゴー(@umephy55DC)です。
医療施設の告知広告を制作することになりました。
が、初回提案時に結構な叱りを受けてしまいます。
そこを1冊の本に助けられたお話です(^^)。
(2004年の作品)

目次

PET検診センターの新聞広告

書籍との出会いの大切さを痛感した思い出の仕事です。
思い出というか、自分で苦労しないと山は登り切れないという教訓だったようにも思います。
本を読む事の大切さも学びました(^.^)

ということで、書籍の大切さを学んだのは最新のがん検診センター開業の新聞広告です。
新聞15段カラー3回シリーズです。
担当するマネージャーは相当細かい点を指摘されると聞いています。

検診センターの最新設備やオープン日の告知をメインに構成するのが基本。
要望は煽って話題になる紙面にして欲しいという依頼です。
しかしオリエンの中で、がんについての知識や大きな切り口の参考になる話は一切出てきません。
とにかく何か作って見せてくれる〜という感じなのですね。

そのために、がんについての知識も細かく勉強しながら切り口を探していきました。
知識については、書店・webなどで勉強しながら企画に必要な要点を整理しました。

予防に勝る治療法はない

予防に勝る治療法はない。をコンセプトにしました。
そしてストーリー性も大切にしながら新聞広告の初回提案を向かえます。

提案時のサムネール数点です。
方向性はいいのですが、検査を受けたくなるようにもっと言葉で煽って欲しいという話しになります。

煽る部分について、医療や癌について質問した瞬間に「勉強もしていないのか」「何もしらないのか」と叱責されてしまいます。
「勉強してから提案し直しや」という事で質問の回答もないままに再提案になってしまいました。

企画が悪い訳ではないのです。
知識が薄いのが気に入られていないのです。

同時に予算の話が出て撮影や数タイプのビジュアルを作る事が不可能な金額提示もありました(T_T)

予算の事を営業と相談すると、予算があれば誰でも良い物ができる。決まった予算内で良い物が作れるから、うめぴぃに頼んだんやん(^.^)と言われます。

そうですけどね〜(T_T)

いつもですが、後で違う予算を言われると困るな〜。

さらには、協力してもらっている制作会社が、そんな金額では出来ないので降りますわ〜と言ってくる始末。今の時代ではあり得ないような、簡単に降りると口にされる訳ですね。

こりゃ今後も揉める可能性もあるな〜と思いすぐに諦めました。

仕方ないので1人で進める事になります。
広告を作る上では問題ないのですが、医療の知識をどうするか?
書店で癌に関する本を数冊買って徹夜で読もう。

やさしい「がん」の教科書

そう思いながら書店に行くとワゴンの中の1冊の書籍と出会いました。
この本を読みなさいと言わんばかりにワゴンに山積みにされて飛び込んできました。
丁度文庫本化された所だったようです。

阪大生が書いた、やさしい「がん」の教科書

帯も当時のままで残しております。

他の癌の本も検討しましたが、難しい文章が多く悩んだ挙げ句に、やさしいがんの教科書のみ購入。
仕事終わりの深夜に読み始めました。

読み始めるとス〜っと頭に入ってきて、とても理解しやすいのです。

人間は60兆の細胞でできている

この本の最初は受精の話から始まります。
一つの受精卵はどんどん分裂し人らしい形を形成し、人らしい機能を獲得していきます。

その数60兆の細胞です。

約280日で1つの細胞が60兆の細胞に分裂します。

しかし、むやみやたらと分裂すると体の形はおかしくなってしまいます。そこは、人間の機能に必要な情報を書き込まれた遺伝子が働いているから各機能にあった分裂をしてくれるのですね。

遺伝子は人の場合約三万個あると考えられています。
一つの細胞の遺伝子が外からの何らかの原因で傷つけられて異常に分裂、増加したのが癌の素です。
細胞分裂に失敗した細胞も免疫細胞によって処分されますが稀に処分されず残る細胞もあります。

デザインの仕事に例えると

・カタログを制作していて、作業中に文字ミスを見つけて修正する=免疫細胞により処分
・しかし、最後まで文字ミスに気づかず印刷してしまう=処分できず残り続ける癌の素
・印刷ミスを知ったクライアントが激怒して無料で再印刷する事になる=悪性の癌
・この印刷ミスに誰も気づかないまま役目を終える=良性のままの癌の素で終わる

少し変な例えですみません。このような事が体の中でおきている訳ですね。

この癌の素は良性ですが20歳代の間に「将来大きくなるがん」の元を一つくらいは体のどこかに持っていると言われています。
大きくなった癌の元は初期(良性)の内に削除すると100%治りますが、じわじわ増えていき悪性になると他の細胞に迷惑をかけていきます。

癌は「一つの細胞の中の遺伝子が異常になり、無制限に増殖するもの」と定義されているらしいです。
普通の細胞と違い、死ぬことができないのでずーっと残っていきます。恐いですね。

そこに、衝撃的な事実も沢山理解できました。

癌の元は何十年もかけてじわじわ大きくなる
20歳代の間に癌の元は体のどこかに必ずできる
癌細胞は誰の体の中でも毎日約40個生まれている
日本人の3人に1人は癌でなくなっている
・などなど

不思議なんですね。ワゴンに置いてなかったら、書店の中で見つけられなかったかもしれないのです。
今のようにネット検索も無い時代でしたしね。

がん検診で早期発見・早期治療

これまでは1㎝以上しか発見できなかった癌細胞がPET検診では、5㎜の癌の塊でも発見できるという特徴を煽りのメッセージを軸に分かりやすく説明した広告に構成しました。
煽ったキャッチコピーから読みやすいボディコピーで理解しやすくPET検診の告知に繋げていきます。
新聞審査に通るのか?という問題もありますが、営業もこれで提案したいという事になりました。

がんの知識も少し理解出来ての再プレゼンです。

主要メンバーへプレゼンテーション

再プレゼンの日にはマネージャーの他、医療チームとセンター長も同席。

企画書しか残っていないため見にくいですが一部を紹介

書籍の内容も踏まえながらプレゼンすると、絶賛していただけました。
もちろん新聞審査の件でコピーが普通になる可能性も話させていただいています。

センター長に「どんな本を読みましたか」と聞かれたのでがんの教科書の話をしました。
「あの書籍はわかりやすいですよね。」「良い本と出会えましたね。」と言っていただきとても嬉しかったのを今でも鮮明に覚えています。

初回のプレゼントとは大違いで気持ち良いコミュニケーションが取れました。
その後は信頼関係も出来て、仕事はスムーズに進んでいきます。
徹夜で勉強した甲斐があった。良かった〜ホッ(^_^)

しかし、新聞審査には通らず、一切の煽りは避けるようにと指摘を受けてしまいます。クライアントのマネージャーも新聞社に掛け合ってくれましたが、難しく言葉は修正することになりました。

最終の完成した広告です。

インパクトが弱くなりましたが、努力の甲斐もありクライアントとの距離が縮まったのが一番の成果。

苦労話が多いのは広告制作の醍醐味の一つです。
必死のパッチの毎日なのです。

流れを運んでこれたのは1冊の本のおかげです。
それだけではありません。医療の事を少しでも理解できた事が本当に嬉しかった案件です。
平成中期の体験でした(^.^)。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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